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逸失利益・失業者

1基礎収入

失業者の後遺症逸失利益を算定するにあたっては、以下のような基準で基礎収入を算定するのが一般的です。

① 労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるときは、原則として失業以前の収入を参考とする

② ただし、失業以前の収入が賃金センサスの平均賃金以下であっても、平均賃金を得られる蓋然性があれば、男女別の平均賃金による場合がある

2 解説

(1) 失業者の場合、事故の時点で収入がないからといっても、将来収入が得られる可能性があるのですから、一律に稼働期間の終期まで収入が得られないとする扱いはなされず、逸失利益が認められるケースも多いといえます。

(2) もっとも、失業者といっても、高齢者の場合や不労所得が十分にある場合等、将来の稼働による収入獲得が期待できない場合には、逸失利益も否定される可能性が高いといえます。

(3) 失業前の収入が同年代の労働者の平均賃金程度に達していれば、通常は賃金センサスの平均賃金額を基礎とすることになるでしょう。それ以外の場合には、これまでの収入実績・年齢・経歴・取得している技能・資格等から適切な金額を認定することになると思われます。

(4) 失業者だからといって、賃金センサスを利用するという主張を行うだけではなく、裁判においては具体的な事故前の収入を源泉徴収票・給与明細・各種税金の証明書・陳述書等で主張・立証することで、より有利な結果を導き出せるようにすることが重要です。

3 事例

(1)無職者の男性について、溶接工の資格を有し、以前は溶接工として稼働しており、交通事故当時も身体的には稼働できない事情はなかったこと等から、平成16年賃金センサス男子全年齢平均年収額である485万4000円平均余命の半分である11年間、労働能力喪失率27%を認めた例(神戸地裁平18.11.1、交民39・6・1525)

(2)無職者の男性について、交通事故の10か月前に56歳で定年退職した後、無職であったが、高齢の母、大学進学を控えた二男など扶養すべき家族を抱えていたことから当然求職していたものと認められること、被害者の労働能力に格別問題とすべき点も見あたらないこと等から、前職の年収額である328万0192円を基礎収入とし、67歳まで労働能力喪失率100%を認めた例(岡山地裁平16.5.7、交民37・ 3・600)

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