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逸失利益・会社役員

1 基礎収入

会社役員の収入は、大きく分けて、①労務提供の対価、②利益配当の2つの要素に分けられますが、後遺症逸失利益を算定するにあたっては、原則として、①労務提供の対価に相当する部分のみが基礎収入となります。

2 解説

(1)当該役員が、会社から役員報酬と給与(その内実が、業務執行の実態を反映しているとき。)を得ている場合には、給与に相当する部分は、基礎収入になる可能性が高いといえます。

(2)報酬として支給されている部分についても、その内実が労務提供の対価である場合には、基礎収入になる可能性が高いといえます。

(3)労務提供の対価部分を算定するにあたっては、会社の規模、同族会社か否か、当該役員の地位・職務内容、利益状況、年齢、役員報酬の額、他の役員・従業員の職務内容と報酬・給料の額等をの事情を総合的にしん酌して判断されることになります。

(4)上記の事情を基礎付ける資料としては、確定申告書、会社の実態や当該役員の仕事内容についての証言・陳述書、法人税の申告書・貸借対照表・損益計算書、勘定科目内訳明細書中の役員報酬手当及び人件費の内訳書等が考えられます。

(5)会社役員の方が役員報酬の名目のみで収入を得いていた場合、その内訳(労務提供の対価部分と利益配当部分)を明らかにすることは、必ずしも簡単なことではありません。そのため、会社役員の方の逸失利益を算定するに際しては、給与所得者の方と比べて紛争になることが多いといえますから、会社役員の方は、専門家に相談して、しっかりとした証拠(資料)を集めることが重要だといえます。

3事例

(1) 建物解体工事・建材卸業等を目的とする会社の代表者につき、個人会社で被害者の職務内容も肉体労働が多いこと等から、月額100万円の役員報酬全額を労務の対価と認めた例(大阪地裁平18.7.10、交民39・4・944)。

(2) 会社の監査役につき、年間100万円程度の役員報酬及び同社の株主として年間40万円程度の利益配当を得ていたが、これらの収入は労働の対価とはいえないので、逸失利益の算出に際して考慮しないと判断した例(大阪地裁平12.8.29、交民33・4・ 1366)

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