逸失利益は男女で異なるか
1 後遺障害逸失利益
(1) 後遺障害逸失利益は、基本的には次のとおり計算します。
(基礎収入額)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
(2) 基礎収入は、給与所得者であれば、事故発生前の現実の収入を基礎として算定されることになります。したがって、個人による差異はありますが、「男性か、女性か」による違いはありません。
(3) 労働能力喪失率は、自動車損害賠償保障法施行令別表第2を参考として決定されます。後遺障害の内容や程度によって、「等級」が分類され、「等級」ごとに労働能力喪失率が決定されるのが基本となります。では、「等級」認定の判断基準にあたり、男女の違いはあるでしょうか。この点について、上記別表2には、例えば、次のとおり記載されています。
第7級12号 「女子の外貌に著しい醜状を残すもの」
第12級14号「男子の外貌に著しい醜状を残すもの」
第12級15号「女子の外貌に醜状を残すもの」
第14級10号「男子の外貌に醜状を残すもの」
このように、一定の後遺障害については、男性よりも女性の方が高い等級が認定されることとなっています。
(4) ライプニッツ係数は、男女に共通のものであり、差異はありません。
2 死亡逸失利益
(1) 死亡逸失利益は、次のとおり計算します。
(基礎収入)×(1-生活費控除率)×(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)
(2) 基礎収入は、後遺障害逸失利益の場合とほぼ同様であり、男女の違いに基づく差異はありません。
(3) 生活費控除率とは、被害者が死亡したことによって、将来の収入から支払われるはずであった被害者の生活費の支払を免れるため、将来の生活費相当分を控除する割合を言います。生活費控除は、被害者の家族関係や性別等によって決定されるため、男女による差異が出てきます。
具体的に、裁判実務上は次の基準によることが多いと言えます。
① 一家の支柱 ・・・・・・・・・・・・・・・・30%~40%
② 女性(主婦、独身の場合等を含みます)・・・・30%
③ 男性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50%
(4) ライプニッツ係数は、男女に共通のものであり、差異はありません。