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逸失利益と後遺障害の算定方法(逸失利益が生じない場合)

1 後遺障害に該当しても逸失利益が生じない場合はあるか?

稀に、後遺障害に該当しても逸失利益が生じない場合があります。

具体的には、①後遺症の程度が軽微であり、かつ、②被害者の職業の性質上、将来においても収入が減少しないと言える場合には、原則として後遺障害による逸失利益の請求は認められないと解されています(最高裁判所 昭和56年12月22日判決)。

このことから、裁判においては、①後遺症の程度が重大なものであること、②被害者の職業との関係で業務に支障が出ることや収入が減少する蓋然性が高いことや、③事故前後を通じて収入に変更がないとしても、それは被害者本人において特別の努力をしていることが要因となっていること、④昇級、昇任、転職等について不利益な取扱を受けるおそれがあること等を具体的に主張立証することが重要になります。

2 慰謝料の増額理由として主張することは可能

上記主張立証によっても、逸失利益がないものと裁判所に認定される可能性は否定できません。そのような場合には、後遺症によって多大な精神的苦痛が生じたものとして、慰謝料を増額すべきことを予備的に主張することも考えられます。

このように、逸失利益を否定した場合に、後遺症の程度を後遺障害の慰謝料算定において考慮することを実務上、「慰謝料の補完性」などと言います。

例えば、睾丸の片方を喪失した男性について、後遺障害等級別表によれば慰謝料は180万円とされるはずであったところ、慰謝料270万円と増額認定された事案があります(東京高等裁判所 平成20年9月4日判決)。この事案では、逸失利益は否定されたものの、慰謝料が5割増額されたことになります。

そのほか、いわゆる「外貌醜状」、「歯牙障害」の事案では、逸失利益を否定する代わりに慰謝料を増額して認定した裁判例が比較的多く見られます。

 

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