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交通事故の逸失利益について(交通事故における損害の考え方)

交通事故において、何をもって「損害」と考えるかについては、いくつかの考え方(学説)が存在しており、そのうち代表的なものとして、以下の見解を挙げることができます。

1 考え方

 (1)差額説

(a)加害行為(事故)がなかった場合の利益状態と、(b)加害行為によって生じた現実の利益状態とを比較して、これらの差額が「損害」であるとする考え方を言います。裁判所は基本的には差額説によって損害を算定します。

 (2)労働能力喪失説

労働能力それ自体が一個の経済的価値を有するものとして考え、後遺障害によって失われた労働能力そのものをもって「損害」とする考え方を言います。

 (3)死傷損害説

「生命の価値に差をつけるべきではない」、「個人尊厳の観点からは身体損害を物的損害と同様に取り扱うことは不当ではないか」との発想から、死傷そのものを損害と考え、一定額を平等に「損害」とする見解を言います。

しかし、「被害者ごとに労働能力や収入に違いがあるのは事実であり、これを無視することは妥当ではない」との批判が多く、通常の裁判実務において採用には至っていません。

2 どのような違いが出てくるか

このような見解の違いは、後遺障害による逸失利益や、死亡による逸失利益を計算する際に出てきます。

「差額説」を貫徹すると、現実の収入の減少がなければ(被害者が無職の場合等)、逸失利益は全くない、ということになります。

「労働能力喪失説」からすると、被害者が喪失した労働能力自体が損害であるため、仮に、被害者が無職であっても、労働能力が失われた以上、逸失利益はある、ということになります。

「死傷損害説」を貫徹すれば、被害者ごとの労働能力の程度に関係なく、一定の逸失利益が認められると考えることになります。

3 裁判実務はどうなっているか

裁判実務は、「差額説」を基本としながらも、「労働能力喪失説」によって一定の修正を加えていると解されています。

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